Livre d'Image 絵本のポケット
気ままな絵本案内
すみっこの絵本
昔から「すみっこ」が好きだった。
カフェのカウンターは、もちろん端っこ。
彼の家に初めて遊びに行っても、ただちに一番落ち着くすみっこを見つけて居座ってしまうくらい
ふてぶてしい「すみっこ」好きなんだった。
周りを囲われていると安心するし、自分の世界に浸れるもの。

薄暗ければ、なおよし。
小さいころは『フランシスのいえで』よろしく テーブルの下に基地を作ったり
押し入れのモノをすっかり出して、部屋に改造したりしたもんである。
大きな段ボールをもらったりすると、嬉々として、もちろん「おうち」にこさえあげた。
『わたしのおうち』の女の子がお客さまを待つ段ボールの家は、
なつかしいすみっこ感覚をよみがえらせる。
物語と夢想がふくらむ小さな個室。
ガムテープでとめた、水玉のカーテン。
それを揺らす風、草の香も、こだわりの部屋の一部だ。

(※この本の個人的ななつかしさは、もうひとつある。
おじゃまで泣き虫、じれったくて、時たまかわいい、弟への気持ち。
ちょっと意地悪なおねえちゃんの心境は、あの頃、まんま。)
わたしが愛した三つの空間。
押し入れと段ボール、そして、おふとんのなか。
ぬいぐるみの代わりに懐中電灯を抱いて寝る、変な子どもだった。
『おやすみなさい おつきさま』など、 夢見のよさそうな寝室はいろいろあるけれど、
『あたらしいおふとん』は、格別。
パパとママがおふるを使って作ってくれたパッチワークのキルトのおふとんにくるまれて
思い出をたどりながら、ふわふわの夢の世界へ・・・

お気に入りの「すみっこ」に居ながら、絵本の部屋に招かれる。
それもまた、至福のとき。
・・・
MOE2007年2月号に「絵本のなかの部屋」という、短い文を書きました。
「窓辺」「台所」「屋根裏部屋」と「家具」の絵本を取り上げています。
(・・で、はみだしちゃった「すみっこ」編)

(2006.12)
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(読売新聞 隔週土曜夕刊に掲載)