Livre d'Image 絵本のポケット
気ままな絵本案内
おたんじょうびの絵本
いくつになっても、誕生日はうれしい。
「おめでとう」と言ってもらうと、 ああ、ほんとにめでたいなあ としみじみする。
三つ子の魂時からの幼なじみとか、高校のじゃり研仲間とか、
そういうとこはたいへんマメな友だちに恵まれており、
ひょっこりお祝いメールをくれたりする。
会えないところで、この日をいっしょに祝ってくれる人がいるということ、
とてもぜいたくな気持ちに、ふんわりラッピングされる。
その日。ウキウキしながらしみじみしつつ、 誕生日絵本を思いつくままに取り出してみた。
まとめて見たことが案外なかったけれど、見渡すと、
「おめでとう」と「ありがとう」
作者の祝福の気持ちがぎゅっとこもった、絵本らしい絵本が多いのだ。
子どもたちに「おめでとう」
自分がここにいることに「ありがとう」
だれかが生まれている毎日に「おめでとう」×「ありがとう」
この世に生まれたみんなに等しく注がれる、あたたかなまなざし。
・・と言うと、わたしは、
ベラ・B・ウィリアムズとエリサ・クレヴェンの画面を、同時に思い浮かべる。
どちらにも誕生日の絵本があった。
『ほんとにほんとにほしいもの』(訳=佐野洋子 あかね書房)と
『おたんじょうびのエルンスト』(訳=香山美子 学研)。
今回はじめて二冊をいっしょに並べてみて、もうひとつ気づく。
ああ。絵本のデザインとはそういうことか、とぼんやりと。
まなざしの連鎖で、『まおちゃんのうまれたひ』(のら書店)を思い出す。
ひ孫の誕生を迎えた神沢利子さんの広々と清澄な詩。
加藤チャコさんの赤ちゃんの息をすぐそばに感じる絵。
幸福な白い光に満ちた絵本。
それから、幼い子どものための詩集『おめでとうがいっぱい』
(詩=神沢利子 絵=西巻茅子 のら書店)を開く。
表題の詩「おめでとうがいっぱい」は、ふつうの日に読んでもぐっとくるけど、
誕生日に読んだら、よろこびもひとしお。

「きのう うまれた こどもたち
 あした うまれる こどもたち
 ・・・
 うみにも やまにも
 おめでとうが いっぱい」

だれかに贈りたい詩。
お誕生日の人は、いないかな。

好きな誕生日絵本は、ほかにもいっぱい。
フィッシャーの『たんじょうび』(福音館書店)は、線が祝福の歌を奏でるよう。
『だってだってのおばあさん』(作=佐野洋子 フレーベル館)は、
99歳の誕生日に読むのが夢だな。

(2006.1)
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(読売新聞4月より隔週土曜夕刊に掲載)