Livre d'Image 絵本のポケット
気ままな絵本案内
ダジャレの絵本
疲れていたり、焦っていたり、痛かったり、緊張したり、追いつめられているときほど、
ダジャレが口をついて出てしまうのは、なぜだろうか。
昨日今日に始まった癖ではない。 入社試験の面接でもそうだったし、 出産のときも、陣痛の絶頂でダジャレを口走ってしまい、看護婦が呆れて病室から出て行ってしまったという悲しい過去がある。
(付き添っていた母が「この子はこういう体質なんです!」と呼び戻してくれて、ことなきを得た)
・・・いつから「こういう体質」になったのか。
少し前、古本屋で思いがけず懐かしい絵本と再会して、軽い目眩を覚えた。
・・・そうだ。物心ついたときには、ダジャレ好きだったのだ。
過去に出会ったダジャレ絵本が、走馬灯のように頭を駆け巡った。

3-4歳の頃のお気に入り。
『ふなのりシンドバッド』(部分)
文=井上ひさし 絵=久里洋二  声の出演=黒柳徹子ほか

お話の間にダジャレ歌がいくつも挿入されてるの。当時流行りの「レコード絵本」というやつ。
妙ちきりんなことばと絵に心奪われた。 今も時々歌ってしまうのは、
「ロック ロック ロック ロックンロール♪」で始まる『ロックちょうのうた』と
「わしはわしであーる♪」で始まる『わしのこみっくそんぐ』。
(*もっと知りたい方には、今度歌ってあげる。<迷惑)
5-6歳の頃のお気に入り。
“HOP ON POP”
Dr. Seuss作 1963

これはスースのダジャレ物の中でも、うんとシンプルなやつ。
“FOX IN SOCKS”とか、ややこしくなるほど快感だった。

他にもその頃の愛読本には、童謡やなぞなぞ、ことばあそび系がいっぱい。
語彙の不自由もあって、純粋に音の悦びにハマれた気もする。
ストレスの多い日々、ダジャレが救いになっていたかも。


こんなのとか・・
“-FAVORITE RHYMES FROM- A Rocket in My Pocket”
William Wiesner絵 Carl Withers編 1967 45セント!

(すてきにくだらないことがいっぱいつまってる、実に心安い絵本。
 表紙にらくがきしちゃうくらい・・)


こんなのもあった・・
"Tricky Questions to Fool Your Friends"
Rosalind Van Gelder作 Boche Kaplan絵 1968 50セント

(ダジャレ入門みたいな、なぞかけ絵本)
そして、ダジャレといってはなんですけど、18歳のとき、
『ことばあそびうた』
谷川俊太郎 詩 瀬川康男 絵 福音館書店 1973
との思いがけない再会が。
小学生のころからそらんじていた詩が、 なぜか某大学の二次試験の国語で出題されて、びっくり。
まるきり不真面目な受験生だったけれど、(うーむ、ここは受かってしまうかも)と。

数えあげれば、きりがない。
思えば人生の節々で、将来を方向づけてきた、ダジャレやことばあそびの数々。。
*おまけ*
20代半ば、 娘が1歳になったころ。
ある晩、ごはんを口に運んでやると、ひとさじ食べて、
「あーおいし」
それから、もうひとさじ食べて
「あーかいし」
とのたまい、
「けけけ」
と得意げに笑ったのだった 。

(2007.2)
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(読売新聞 隔週土曜夕刊に掲載)