いまでは、すっかりアスファルトで平らかに固められてしまったけれど、
昔このあたりの路はそこいらじゅう、みずたまりだらけでした。
みっちゃんちの前のでこぼこ路は、格別です。
雨が降ると巨大な「どろたまり」がいっぱいできて、やんでも何日も消えません。
一つ一つよけたりまたいだりしなが
ら、みっちゃんちの門に無事到着できると、
ほうっと安堵と達成感に満たされるのでした。
ある日、幼稚園のいちばんの人気者くみちゃんが、
駅の向こうの家から、みっちゃんちに遊びに来ることになりました。
ところがその日が、あいにくの雨。
わたしは、みっちゃんとともに、くみちゃんをつつがなく案内しなくてはと、
先
に立ち、ぬかるみをしずしずと進んで行きました。そして
「ここすべるから、気をつけてね」
と振り返ったとたん、
ずべっとすべって、深いどろたまりにしりもちをついていま
した。
「みずたまり」と聞くと、あのときの耳たぶの熱さとお尻の冷たさが、からだによ
みがえります。
(2004.6)
(2歳の頃 晴れの日も長靴が好きな子どもでした)