Livre d'Image 絵本のポケット
気ままな絵本案内
「好き」の絵本
バレンタインのプレゼント。
人生最初の相手は女の子だった。
それも、ちょっと嫌いだった子。

そこからわたしの恋愛観は歪んでいた・・・
というのは、早合点です。
でも「好き」の絵本といって、きゅんと思い出すタイトルが、
意外なほど少ないなあ。

きゅんと思い出した、その1。
『あのときすきになったよ』
(薫くみこ 作  飯野和好 絵 教育画劇 1998)
・・・ もう、このタイトルから、いけません。
表紙見てるだけで、じんじんくる。
いや、そういう絵本じゃないんだけど。
飯野さんの絵は、色っぽい。
『桃子』(江國香織 文 飯野和好 絵 旬報社  2000)
なんて、めろめろにすごいのもあるけど、
『あのとき・・・』は 、小学1年生の女の子ふたりの、
おもらしエピソードにまつわる友愛を描いた物語。
絵から来る、生っぽい情感。
甘酸っぱい記憶が立ちのぼる。
きゅんときて、せつない。
次に浮かんだのは、なぜか
『きみなんかだいきらいさ』
(ジャニス・メイ・ユードリー文 モーリス・センダック絵 こだまともこ訳 冨山房 1975)
男の子ふたりの気持ちをシンプルに描いた本。
これも、いわゆる色恋とはちがうけれど、
小さい頃の自分の気持ちを思い出すと、どうやら
「すき」より「きらい」に、「きゅん」がこもってるんだな。
それから、同じ画家の
"I'll Be You and You Be Me" Ruth Krauss 文  Maurice Sendak 絵
を思い出したよ。
こっちは、ちっちゃな「きゅん」が
あちこちに散りばめられてて、すなおにいい。
童心社の大人の絵本シリーズで
『愛かぎりなく』 (ネクラーソフ 文 岩崎ちひろ 絵 谷耕平 訳 1968)
という、豪速球ど真ん中なタイトルがあるのだけれど、
昔、美術館で展示を組むのに、
ものすごーく苦労した覚えがある。
今よりもだいぶん若かったわたしには
「狂おしい」
ということばの真意がわからなくて、
悶々としたものです。

今は、昔よりは、ちょっと。
たぶん、まだまだ、ですけど。

(2008.2)
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(読売新聞 隔週土曜夕刊に掲載)